リピーター生む「天丼てんや」の心理作戦

 

リピーター生む「天丼てんや」の心理作戦 1

ロイヤルホールディングスは2月15日、2015年12月期の決算を発表した。売上高は1303億2700万円、営業利益は48億9900万円と4期連続の増収増益だった。

増益を特に支えているのは、ホテル事業と外食事業。だが外食事業の中身をみると、主力業態である「ロイヤルホスト」は、減収減益だったが、10年ほど前から「外食多角化」の柱として取り組んできた「天丼てんや」事業が、大きく業績に貢献している。同事業の2015年の経常利益は前の年から5割増えて、5億3000万円を突破した。

てんやの既存店ベースの客数と売上高は、2015年11月に前年同月を下回ったのを除き、2012年12月から2016年1月までプラスを続けている。

1989年創業の「天丼てんや」は、国内外で175店(2015年12月末時点)を展開するてんぷら業態で、テンコーポレーションが運営する。2006年にロイヤルホールディングスが子会社化して以来、食材の仕入れなどで経営効率を上げつつ、客数を増やす施策を進めてきた。

「モノがあふれる豊かな時代、てんぷらは嗜好品だし、食べない人は困らない。でも何回か食べるようになればその味が忘れられなくなり、常連になるはず。そのためのシカケ作りが大事だと考えた」と、テンコーポレーションの用松靖弘社長は話す。2012年春に社長に就任するまでは、てんやを利用したことがなかったというが、月に1回お得な商品を提供する「てんやの日」を始めることを思いつき、実行した。てんやの日は毎月18日、390円という割安な天丼が売られる。ヒントは、「ケンタッキー・フライド・チキン」が毎月28日に実施していた特売の「にわとりの日」だったという。

外食では一般に、1回は行ってもしばらく行かないという「休眠顧客」への対策も問題になる。そこで、てんやの日には、次のてんやの日まで使えるクーポンを配布し、リピーターを増やす仕組みを作った。「数カ月の間に期間を空かずに3回来てくれれば常連になる。そのための心理作戦のようなものだ」(用松社長)。

てんやの日に持ち帰りの弁当をアピールしていることも、客数の増加に貢献している。てんやの日を始めた当初は1店あたり1日100個程度だったテイクアウトの販売数は、3年以上経過して大幅に伸びているという。東京・JR赤羽駅前のてんやでは、てんやの日には黄色い法被を着たスタッフが呼び込みをする。販売数は全国トップクラスだ。毎月てんやの日に購入しているという60代の主婦は「いつの間にか、毎月この日は天丼を食べる日になり、最近ではてんぷらだけ、月に2回は買っている」と話す。

てんやはこの数年で、顧客ターゲットを3つ設定し、それに合わせて商品を磨き、提案してきた。まず、最も多いビジネスマンには定番のワンコインの天丼。次に多いシニア層には、アナゴやマツタケなど、季節の商品を入れた年8回出す季節限定の天丼だ。そして、20代などがっつり食べたい若年男性向けに「肉天丼」をアピールした。通常、てんぷらの具材には肉はない。だが、てんぷらを食べる習慣がなかったような若者向けに、鶏肉や豚肉を使った「新しいカテゴリー」を作ったという。「シニアがさらに高齢化を迎えていく中で、新しい顧客を呼ぶ“種まき”の意味がある」と用松社長は話す。

店づくりも工夫した。カウンターの幅を広げるなど、居住性も高めたほか、油の対策にも力を入れる。てんぷら業態であるため、壁に油がつきやすい。そこで、毎年20店舗ずつ改装してきた。

使用する油は香りの強いごま油ではなく、キャノーラ油を使用しているのも特徴だ。軽めの仕上がりになるように油を選んでおり、今年は、より軽めの油に変える方針だ。

ロイヤルホールディングス傘下で「天丼てんや」を運営するテンコーポレーションの用松靖弘社長。「嗜好品のてんぷらをリピートしてもらうためのいくつかの“しかけ”が、客数が増加した要因だろう」と話す

てんやは2016年、前年並みの23店の開店を予定している。国内は18店で、そのうち10店はフランチャイズチェーンの出店の見込みだ。現在は駅前などの繁華街を中心に出店しているが、ロードサイドやドライブスルー店も計画している。

ロイホは中を充実させる時期

てんやが好調な一方で、気になるのは主力業態の「ロイヤルホスト」だ。同事業は2015年に減収減益だった。既存店の客数をみると、2013年には前年の3.2%増と好調だったが、2014年は3.3%減、2015年は4.6%減と減少の傾向が続いている。

2014年は客数の落ち込みを単価のアップでカバーしていたが、2015年にはそれが難しくなり、既存店の売り上げがマイナスになった。

こうした状況について、ロイヤルHDの菊地唯夫社長は「質の高い素材を使った商品を、きちんとしたサービスで、価値のある価格で提供する。その方向性は間違っていない」と強調する。ロイヤルホストは、1996年をピークに既存店売上高が15年連続で減少した経緯がある。それを3年で回復させた結果を振り返り、「少し走らせすぎたのかもしれない。今はやみくもに客数の確保に走るのではなく、内部を充実させて足腰を鍛える時期だ」とも説明する。

ロイヤルホールディングスの菊地唯夫社長。既存店の客数が伸び悩む「ロイヤルホスト」について、「今はサービスや質をしっかり鍛える時期」と強調する(写真:陶山勉)

ロイヤルホストは2016年、新規の出店はしない。サービスの質を高めたり、サラダの生野菜を全て国産にしたりして、ブランドの中身の充実に注力する方針だ。
ロイヤルHDは、グループ全体が多様なポートフォーリオを持ち、全体でカバーし合う点が強みともいえる。外食事業の攻める業態と守る業態をいかに差配していくか。2016年度はその舵取りが重要といえるだろう。

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